シアターP の呟き(もしくは嘆き)

ごろごろするか、だらだらするか、それだけがもんだいだ

 

 それはある夏の暑い日であった。私は家でだらだらしていた。私の家は南側と西側に窓が有り、そこから差し込 む日光の角度によって部屋の中の日向が決まる。薄いカーテンがあるのだが、閉めすぎると部屋の中が暗くなり、開け過ぎると眩しいので、半分程だけ閉める。 時間、天候、カーテンによる日光の差し具合に対し、半ば無意識に部屋の中のベストポジションを探す私。そこでふと、さっきまでだらだらしていたのに、いつ のまにかごろごろしている自分に気が付いた。私はいつからごろごろしていたのだろう。

ごろごろ・・・

1.雷がとどろきわたる音。またそれに似た音。幼児語で雷。「おなかが―なる」
2.重量のある固いものが引っ掛かるように転がっていく音。また、そのさま。「台車を―引く」
3.大きな固いものがあちこちに転がっているさま。また数多く存在していて珍しくないさま。「いい選手が―いる」
4.人が怠けて何もしないさま「家で―している」
5.異物が触れて違和感があるさま。「目にごみが入って―する」(幼児語)「ごろごろ様」かみなり様  「広辞苑 第六版」より

 

私は、4の例にある通りの状態であったと思ったが、一応「だらだら」を調べてみると

 

だらだら・・・


1.粘り気のある液体が糸を引くようにしたたるさま「冷や汗が―と流れる」
2.なだらかな傾斜が続くさま「―とした坂道」
3.物事の進行が非常に遅く。際限なく続くさま。「挨拶が―と続く」
4.無意味に怠けて時を過ごすさま「家で―している」  「広辞苑 第六版」より

 

こちらの4の意味の方が私の状態を精確に表していると感じた。とりあえず今わかっている「ごろごろ」と「だらだら」の違いは「無意味か否か」である。では無意味とは何かというと

 

無意味・・・意味のないこと。価値のないこと。つまらないこと。無意義。ナンセンス。「―な議論をくり返す」「今から行くのは―だ」広辞苑 第六版より

 

すごい書かれようである。編集者の周りに余程不愉快で無意味な輩がいたのだろうか。さておき、只「価値のないこと」は無価値だろうし、「無意味」を 説明するのに「無意義」という単語を持ってくるのも、もはや適切かどうかわかり兼ねるが、こういうのはその説明全体からニュアンスを汲もうと思う。つまり 私流に「家でだらだらしている」の「だらだら」を説明するとなると

 

だらだら・・・無意味(つまり非生産的に、非能動的に)に怠けて(半覚醒状態で)時を過ごすさま

 

といった意味である。ここで重要なのは「何をするでもない」という状態をキープすることである。これは案外難しい。気がつくと昼寝してしまっていた りすると、睡眠という「意味」が発生してしまい「だらだら」ではなくなってしまう。私が基準にしているのは「宅配便がドアをノックしているのは微かに聞こ えるが、全く立ち上がる気がない」といった程度の状態だ。即座に立ち上がって玄関に向かうのも、ドアのノックが聞こえなかったのも、どちらも「だらだら」 ではない。前者は「てきぱき」だろうし、後者は「睡眠」と呼べる状態である。

話を戻して、「ごろごろ」と「だらだら」の違いをもう少し考察してみる。

まず「ごろ」のつく他の単語から「ごろ」感を考える。

 

ごろつき(破落戸は当て字)・・・一定の住所も、職業もなく、あちこちうろついて、おどしなどを働くならずもの。

ごろつく・・・

1.雷がごろごろと鳴り響く
2.なす事もなくぶらぶらしてなまけている

ごろ寝・・・寝じたくをしないで、ごろりと横になりねること「ベンチで―する」  以上「広辞苑 第六版」

ごろつく・・・働かないで遊び歩く「毎日ゲームセンターでごろついている」

ごろごろ・・・


1.家の中にいて、寝転んだりして過ごす様子「家の中で―していないでどこかへ行こう」
2.大きいものや重いものがころがる様子「大きなタイヤが―ころがってくる」
3.方々にいくらでもある様子「世間にはそんな話は―している」
ころころ・・・小さいものや軽いものがころがる様子「ボールが―ころがる」  以上「類語大辞典 講談社」

 

「毎日ゲームセンターでごろついている」や「大きなタイヤが―ころがってくる」や、雷の名称になっていることからわかるのは「ごろ」には多少の運動 性が備わっている、ということである。広辞苑 第六版「ごろごろ」の解説の2より、何か重いモノが移動する際に発せられる音が、「ごろ」感の形成に深く関 わっていることがわかる。また本当に「だらだら」している奴は、まずゲームセンターに行かないだろうし、大きなタイヤも転がってこないであろう。つまり私 が夏のある日「ごろごろ」していたのは部屋の中のベストポジションを探している最中のみであり、「だらだら」しながら途中(日光の差し具合等諸条件が変化 すると)「ごろごろ」していた、ということになる。「だらだら」ベースで機を見て「ごろごろ」、というのが一番的確だ。

では次に「だら」感を考えてみる。

 

 だらだら・・・

―おり(降り)・・・坂の傾斜のゆるやかなくだり

―きゅう(急)・・・初めはゆるやかで、にわかに急になること

―ざか(坂)・・・ゆるやかな傾斜が長く続く坂

―のぼり(上り)・・・道の傾斜がゆるやかな上りであること

―まつり(祭り)・・・東京、芝大神宮の例大祭の俗称。九月十一日~二十一日まで行われるのでそういう。→生が市(しょうがいち)・千木箱(ちぎばこ)

だらつく・・・だらだらする。ぐずぐずする。浄、女腹切「―・くまいぞ」

だらり・・・
1.物が力なくたれ下がったさま。またしまりがなく、だらしないさま。日葡「ヲビ、またケンナドガダラリトサガッタ」「腕を―と下げる」
2.だらりと結び下げる帯の結び方、江戸時代の女性に流行し、現在は京都の舞妓などに残る。だらりのおび。「―結び」

だらんと・・・

1.布などがだらしなく垂れ下がっているさま「旗が―垂れている」

2. 肉体の緊張を欠いてしまりが無いさま「口を―開ける」     以上「広辞苑 第六版」

だらける・・・気持ちがゆるみ怠ける。「だらけてばかりいると、卒業できませんよ」

だらだら・・・急ごうとしないで怠けている様子「―仕事するくらいなら、何もするな」

だれる・・・飽きたり、緊張感がなくなったりして、物事に対する集中力がなくなる「期末試験が終わったあとの授業は―」「理事長の長い話に、子       供はだれてしまって・・・」

だらける・・・緊張感がなくなるなどして、気持ちや行いにしまりがなくなる。「若い者のだらけた態度を見ていると、しゃんとしろと言いたくなる」「だ       らけた服装(試合)」「猛暑の中で練習しても―だけだ」

だらしない・・・精神に緊張を欠いてて、きちんとしたところがない様子。「あの人は生活態度が―」「服をだらしなく着る」「あの人は女に―(やたら        と女性と性的な関係を持ちたがる)」

だれ気味・・・だれているような様子。「試験も終わって、生徒は最近―だ」

だらっと・・・気持ちや態度にしまりがない様子。「ふだんはとても忙しいので、たまの休みには―過ごすことが多い」

だらりと・・・

1.態度や行いなどにしまりがない様子。「今日も仕事はなくて、一日―寝そべって過ごした」
2.粘り気のある液体が一遍または一筋、ゆっくりと流れ落ちる様子。「―よだれを垂らした赤ん坊」

たらたらと・・・液体が少しずつ、何かを伝って続けて流れ落ちる様子。「ひたいから血が―と流れた」

だらだらと・・・

1.気持ちや態度にしまりのない状態が、長く続く様子。「定年退職した父は、毎日―と過ごしていてもしかたがないから、思い切って学校に通うことにした、と言った」
2.液体が何かを伝って続けて流れ落ちる様子。「急な坂道を上っていくと、汗が―流れた」 *「たらたら」より量が多く、勢いが激しい
3.てきぱきせず、いたずらに時間をかけて行う様子。「仕事―やって残業代稼ぐのは下の下だ」「いつまで―と話をしているんだ」

以上「類語大辞典 講談社」

 

各単語の解説に大体共通しているのは、緊張感の欠如・運動速度の遅さ、の二点だと思う。特に運動速度の遅さについては、「ごろ」に備わる運動性より も速度が低い印象を受ける。運動速度はイコールその場に留まろう留まろうという意志(重力)の大小に反比例する。私のあの夏の意志は地球よりも大きかった ので、宅配便を受け取ることは出来なかった。後悔はしていない。

他にも「だら」のつく単語やその類語は存在している。

 

ふしだら・・・だらしがなく、品行がよくない様子。「―な女」 *特に女性が性的にだらしないことについて用いることが多い

自堕落・・・生活態度がだらしない様子。「―な生活」「彼は最近―になっている」

爛れた・・・精神や生活態度が健全さを失い、自堕落である様子。「―生活を送る」

のんべんだらりと・・・これといって何をするでもなく、だらだらと無駄な時間を過ごす様子。「君たち、貴重な夏休みを―過ごす手はないぞ」

でれでれと・・・態度や動作にしまりがなく、だらしない様子。「若い女を見るとすぐ―する」 *異性にひかれてだらしない態度をとる様子について         用いられることが多い       

 

「ふしDaRa」「のんべんDaRaりと」「DeReでれ」などから、「DaRa」のDとRの音が緊張感の欠如と運動速度の低さをもたらしていると推測できる。

最後になるが、「DoRaえもん」の身体の緊張感の欠如も、もちろん偶然ではない。